dessin plus フランス料理店マダムのブログ

フランス料理店で働くマダムである私の日々のつぶやき。 お店のお休みやお知らせ等もろもろの情報です。

感謝と後悔と誓い  

ちょっと真面目な話。
きっと長くなるしうまく書けないかもしれない。

先日ある名前で予約が入った。
『年に数回ご来店下さるMさん』のお嬢さんからだった。
お嬢さんは“家族で伺います。”とおっしゃったので、当然Mさま夫妻もお見えになると信じていた。
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来店されると、お嬢さんがた3人とお母様の4人。
そこにご主人であるMさんの姿はなかった。ひさしぶりにお顔を見る奥様に思わずこう声をかけてしまった。
「今日は、ご主人のお姿がないんですね。久しぶりにお顔が拝見したかったです。」
奥様は、なんとも例えようのないお顔をされて、代わりにお嬢さんが口を開いた。
「父は去年他界いたしました・・・・。きっと聞かれるだろうなと思っていました。」と。

ものすごい衝撃を受けました。
実は、最後にMさんにお会いしたのはこの時。→
この頃、わたしは本当に体調が悪く、仕事する事・人前で笑う事さえ苦痛に感じており、
さらに7年務めたスタッフが辞め、休める環境になく、逆に厨房の手伝いもしながら働いていた、
この10年において最も過酷で辛かった時期。

そんな時、暖かい声を掛けてくれたMさん。わたしがギリギリで押し潰されそうなあの時に踏ん張れたのは
あの一言があったからかもしれない。
あの日以来、お会いしたら絶対最高の笑顔でサービスしたいとずっとずっと思い続けていた。
しかしそれは、かなわないものになってしまった。

わたしはどれだけあの時、Mさんに救われたかをご家族に向かって話し始めました。
情けない話、話し始めたら声が詰まってボロボロと涙が出てきてしまった。
(せっかくお食事に来て楽しもうと思っているご家族にこんな話をしてしまって何をしてるんだ。)
と、言うもう1人の自分がいながら、感謝の言葉を述べる事は止められなかった。
奥様は「主人も喜びます。仏前に報告しますね。」と答えてくださった。

***********************
実は、この話には、まだ続きがある。
わたしは、後悔してもしきれない。そしてさらに大切な事を亡くなったMさんから再び教わった。

私は、Mさんが最後にお見えになったのはこの時だと信じていた。→
帰り際に奥様に「私たちが最後に来た時は奥様(わたし)にお会いできなかったから。」と言われるまでは。

私は、どれだけ体がしんどくても辛くても店に立って笑っている。それは自負している。

が、この10年に1度だけ仕事を投げ出した事がある。
事の発端は、だんなさんのたった一言の暴言だったが、思わず口から出た言葉にせよどうしても許せない一言だった。ちょうど精神的にも肉体的にも参っていた時に受けた一言は、仕事も何もかも投げ出すのに十分だった。正直、死ななかっただけ大したものだと思う。笑。
まぁ冗談は別として、その仕事を放り出した日(ディナータイム)は、ほぼ満席だった。
そして、その中にMさんはお見えだったのだ・・・・・。

だんなさんの言うところの、自分の調理人人生において最も思い出したくない日。
デッサンプリュスにおいて最低最悪の夜だったと思う。

それに気づいた時、【愕然とする】という感覚を初めて味わいました。
ぽっかりとお腹のそこに穴があいたような、体に力が入らないような・・・。
とにかく情けなさと申し訳なさの入り混じった複雑な気持ちでいっぱいになりました。
もちろん、あの時の自分は追い詰められていたけれど、
「サービスのプロ」と褒めてくれ、食事のひと時を楽しみにしてくれたMさんの最後のディナーに
私はいなかったのだ。プロ失格の何者でもない。

あの時が最後だったのに。
悔やんでも悔やみきれない・・・・。
そして亡くなったMさんに教わった気がする。
私は一時の感情だけで、特に怒りなどの感情で心を動かしてはならないのだと。
デッサンプリュスのマダムとして、お客様と過ごすその時間、一瞬一瞬を大切にせねばならないのだと。
もしかするとそれは最後の時間かもしれないのだから。

お店がオープンして10年。少しは成長したと思う。
でも、相変わらず未熟で不完全だともしみじみ思う。
反省する事も情けない話も山のようにあるけれど、少しでも
いや、少しづつMさんのいう「サービスのプロ」の本物になれるよう努力しようと決めた。

私にしか出来ない唯一無二のフランス料理店のマダムになろうと。

ただの口約束だったのに釣った立派な真鯛を持ってきてくれたMさん。
「和食でもないのに、ほんとにここは魚がおいしいなぁ」と笑って言っていたMさん。
接待で利用してくれた時、慣れないスーツを着たのはいいけど足元サンダルで来ようとしたMさん。

Mさん、いろいろ本当にありがとうございました。
自分自身にいっぱいいっぱいで、まさか、闘病生活を送っていらっしゃったとは思いもしませんでした。
お疲れ様でした。安らかにお休みください。
心の底からご冥福をお祈りいたします。
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Posted on 11:45 [edit]

category: 日記

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コメント

ジ~ンとして

読みながら・・・ジ~ンとして私まで涙してしまいました。

マダムに慰めや応援の言葉なんて掛けれる立場じゃないけれど、「うん、うん、そう、そう、わかる」と、同じような体験や重なる部分があり、何度も何度も読み返していました。

マダムの心の中にはいつもMさんがいて、これからも優しく包んでくれるでしょうね。


・・・ごめんなさい、うまく言えなくて。

URL | 妻わさび #er8g3Pl6
2013/12/05 00:13 | edit

Re: ジ~ンとして

妻わさびさま

ありがとうございます。
先輩の意見は参考になります。
妻わさびさまのところは、うち以上にお客様との繋がりが密な気がいたします。
きっとわたしなんかよりたくさん、そして色んな経験を積まれていると思います。

今回のことで、投げ出してはいけない自分の立ち位置を再確認いたしました。
いい勉強になったと思います。
これから今まで以上に努力して楽しい時間を作れるようにしていこうと思えました。
妻わさびさま、これからも良き先輩として叱咤激励よろしくお願いいたします。

URL | デッサンプリュスのマダム #-
2013/12/05 10:10 | edit

ご無沙汰してますね。

M氏からのバトンを受けたマダム。
次は、マダムがそしてdessin plusが来られた方を励ます勇気付ける順番なのでしょうか?
心温まる場所としていつまでも。

こんな、コメントしながらも年に極僅かしか食事に行かない私を許してね。

URL | T nakane #-
2013/12/05 15:14 | edit

Re: タイトルなし

Nくん、お久しぶりです。
10年も仕事をしてると色んな人と出会い色んな経験します。

この経験ひとつひとつを無駄にしないように今後の自分の仕事に生かしていこう思っています。

URL | デッサンプリュスのマダム #-
2013/12/06 09:53 | edit

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